エスポージト
Espositoはどういう訳か、孤児に付けられる名前としてもポピュラーだそうだが、マルゲリータを最初に世に出した1880年創業のピザ専門店[ラファエレ・エスポージト]でも有名だ。
ナポリピッツァの歴史に欠かせない由緒正しき師匠の名を冠したピッツェリア[エスポージト]にやって来た。場所は天満橋。
広島出身の哲平氏は奥方とともにナポリ語を自在に操るうえ、他店のピッツァイオーロからも一目置かれるテクニックの持ち主だと聞いていた。
ようやく訪問する機会に恵まれたその店は外観からだと割とコンパクトに映るのだが、ナポリの場末のピッツェリアのような、男どもにとって居心地の良い空間だ。
店内にはRAIだろうか?イタリア語のラジオ放送が流れている。音楽ではなくイタリア語が終始異国情緒を演出している。
それが原因なのか、ジェームスボンドの007に出てくる"BLADES CLUB"でコントラクトブリッジに興じるような人々の姿はないが、アジト色を感じさせる。
だがよくよく見るとプルチネッラ人形があちらこちらに置かれ、やっぱピッツェリアじゃ・・・。
パスタ類は置いてない潔さ。ビールを口にあれこれ考えるが、今夜は人任せにしよう。
得意のピッツァ以外にも魚介や肉料理も窯焼きに煮込みにとなかなか充実。
1ドルが360円の頃から当時のファッションのメッカ、フィレンツェの展示会に行っておられたイタリア通の女性もここがお気に入りで大の常連様のようだ。
届いたばかりのモッツァレラがあるという事で「カプレーゼ」。
そして「サケノアテー!」と小声で出してきたのは、タコと野菜の煮込みの温かさがなかなかの「前菜盛り合わせ」。これにはスプマンテ頼まんでどうする?
ガエターノ・エスポージト氏の得意ピッツァは「メッザノッテ」と聞いていたがメニューにはない。
本日は「ペスカトーレ」と「マルゲリータD.O.C」を試そうぜ。
こねて伸ばす作業に見入った。叩きつけたり空中回し技は使わず、調理台を転がしてはすくい取るような一連の動作に神経を集中させ、生命を吹き込む。
一瞬の出来事だ。軽業だ。
「僕にはあんな柔らかいのからは焼けません・・・」
某ピッツァイオーロも舌を巻く。
本場さながらのテクニックを天満橋で遺憾なく発揮している哲平選手なのであった。
なんせ焼く工程に入るまでに心惹かれてしまうピッツァであるのは事実だが肝心なのは味。
「ペスカトーレ」では当たり前の事だがトマトソースの存在感に改めて驚く。
トマトの浅瀬に歯を押し戻す魚介がハーブ焼きだ。不味い筈がない。
コルニチョーネは大人しめだが、天気図にある気圧線みたいな線が見て取れる。
「これは旨いピッツァに多く見られる焼きの断層模様なんや。」とナポリに頻繁に行くという同行者。
とろけるぜ、オマエの匠ぶりに・・・。あとで記念撮影決定だ。(下)
「マルゲリータD.O.C」はここでは水牛モッツァレラとバジルがトマトソースに乗っかった物。
D.O.Cってビアンカであったりそうでなかったり、店によって指す物は色々だ。
ぱっと見は焼き加減に統一感はさほどない気がしたが、食べると脱帽。
ここのは見た目以上に食べた際のインパクトがある。
切り分けて口に運ぶのにこんなにしなやかだったピッツァって記憶がない。「これがナポリなんや」と言われたなら、色んな記憶・追憶をさかのぼってもただ頷くしかない。
お値段が総じて高めなのは否めないとか言いながら、次回あの方を接待ならコレかな・・・、あいつと来るならこうかな・・・なんてグランド・メニューを見ながら今回の断念事項と次回のテーマをきっちり決めている。
排気口が低めの位置にある日本製の窯で焼くんだが、もしこの窯がナポリの物だったらどうなんだろう・・・?
現地オリエンテッドな窯と排煙設備は二の次でっか?
午後話したピッツァイオーロによると、何処とは言えないが、超本格ナポリ窯を手に入れてもまことに残念なピッツァしか焼けないピッツェリアもある・・・と。
[Pizzeria Va Booo]のも国産窯らしいし、やはりこの世界も「弘法 筆を選ばず」なのか。
ピッツェリア エスポージト(PIZZERIA ESPOSITO)
大阪市中央区船越町1-1-11 TEL 06-6809-2979
不定休 / 17:30~22:00(土・日・祝;12:00~14:30 17:30~22:00)
by byrdland335 | 2011-09-14 03:46 | 佛・伊